AIデータセンター関連株 - 電力・電線・冷却で見る日本株8選
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AIデータセンター関連株 - 電力・電線・冷却で見る日本株8選

AIデータセンターの本当のボトルネックは電力です。発電(三菱重工業)、電線・光ケーブル(フジクラ、住友電工、古河電工)、電力機器(日立、富士電機、三菱電機)、冷却(ダイキン)まで、AI電力バリューチェーン8銘柄をPER・PBR・ROEで整理します。

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AI関連株というと、たいてい半導体を思い浮かべます。メモリやHBM、検査装置といった銘柄で、この分野はメモリ・HBM関連株10選の記事で扱いました。ところがAIブームには、半導体に劣らず重要なのにあまり注目されてこなかったもう一つの軸があります。それが電力です。

生成AIを動かすデータセンターは電気を大量に使います。GPUが増えるほど、その電気を作り(発電)、送り(送配電・電線)、冷やす(冷却)インフラが一緒に大きくならなければなりません。そのため最近の日本市場では、データセンター電力の関連株が半導体に劣らず大きく上がり、とりわけ電線銘柄の上昇が劇的でした。

本記事では、AIデータセンターの電力バリューチェーンを発電、電線、電力機器、冷却の4段階に分けて、代表的な8銘柄を整理します。

指標は2026年6月5日の終値ベースの参考値で、相場によって日々変わります。指標の定義は株式の投資指標の読み方の記事で整理しました。実際の判断の前には各証券会社や公式IRで最新値をご確認ください。

表A - バリュエーション

バリューチェーンの段階順に並べました。PERと配当は予想ベースです。

銘柄コード段階時価総額予想PERPBRROE予想配当
三菱重工業7011発電12.79兆31.1倍4.1212.2%0.83%
フジクラ5803電線・光ケーブル8.43兆39.1倍14.0332.5%1.02%
住友電工5802電線・光ケーブル10.33兆30.7倍3.7014.7%1.26%
古河電工5801電線・光ケーブル3.47兆43.8倍8.2719.1%0.48%
日立6501電力機器24.04兆25.4倍3.6312.9%1.10%
富士電機6504電力機器2.29兆22.1倍2.8213.1%1.40%
三菱電機6503電力機器12.71兆25.0倍2.749.7%1.13%
ダイキン工業6367冷却・空調6.95兆23.7倍2.139.1%1.52%

ひと目でも、PBRがとりわけ高い銘柄が目につきます。フジクラはPBR 14.03倍、古河電工は8.27倍と、純資産の8〜14倍で取引されています。この2銘柄がなぜここまで高くなったのかは、後ほど別に取り上げます。

表B - 収益性・成長・変動

同じ8銘柄を収益性と成長、変動性で見直します。増収率と経常増益率は前年度比です。

銘柄コード営業利益率増収率経常増益率自己資本比率ベータ
三菱重工業7011-−1.1%+26.7%37.4%1.45
フジクラ580316.0%+20.7%+45.4%57.8%1.90
住友電工58028.2%+9.2%+39.4%56.9%1.62
古河電工58014.9%+8.8%+56.2%39.1%1.73
日立650111.3%+8.2%+32.2%43.7%1.46
富士電機650411.1%+9.3%+17.3%56.9%1.47
三菱電機65037.3%+6.8%+20.3%61.0%1.28
ダイキン工業63678.3%+5.5%+11.4%55.9%0.87

8銘柄すべて経常利益が二桁で伸びています。AI電力の需要が実際の業績につながっているということです。ただしベータを見ると、ダイキン(0.87)を除けば大半が1.3〜1.9と高く、市場より大きく揺れる銘柄です。

第1段階 発電 - 電気を作る

データセンターが増えると、まず必要になるのが電力そのものです。

三菱重工業(7011)はガスタービン発電設備の強豪です。データセンターの急増する電力需要に合わせて発電設備の受注が増えるという期待が大きいです。防衛とエネルギーを併せ持つ会社なので、AI電力はそのうちの一つの軸です。経常利益は前年比+26.7%と伸びましたが、予想PER 31.1倍とすでに期待がかなり織り込まれた状態です。直近3か月の株価は−20.4%と調整を受けました。

第2段階 電線・光ケーブル - 電気とデータを送る

今回のAI電力テーマで最も劇的に上がったのが電線銘柄です。データセンターの内外をつなぐ電力ケーブルと、サーバーを結ぶ光ケーブルの需要が爆発したからです。

  • フジクラ(5803)はデータセンター向け光ケーブルの代表株です。1年の株価が+312.8%、3倍を超えて上がり、ROE 32.5%、経常利益+45.4%と業績がその上昇を裏づけています。ただしPBR 14.03倍はこの表で圧倒的に高く、期待が業績より速く走った部分もあります。私も保有しており、比重と理由はポートフォリオ公開の記事に整理しました。
  • 住友電工(5802)は電線、光ケーブル、自動車部品まで幅広い総合電線会社です。1年+337.7%とフジクラより大きく上がりましたが、PBRは3.70倍と相対的に負担は軽めです。事業が多角化しているため、フジクラほど純粋なデータセンター銘柄ではありません。
  • 古河電工(5801)はこの8銘柄で上昇率が最も劇的です。1年の株価が+598.9%、約7倍に跳ね上がりました。経常利益も+56.2%と大きく伸びましたが、予想PER 43.8倍にPBR 8.27倍とバリュエーションが最も重いです。期待が最も先行した銘柄です。

第3段階 電力機器 - 電気を扱い、変える

送電や変電、電力変換といった電力機器も、データセンターインフラの核です。

  • 日立(6501)は送電、配電のグリッド事業を持つ時価総額24兆円の大型株です。データセンター電力インフラの幅広い恩恵が期待でき、経常利益+32.2%と業績も堅いです。大型株らしくベータ1.46と、電線株よりは揺れが小さいです。
  • 富士電機(6504)はパワー半導体(電力変換用の半導体)の強豪です。この表で予想PER 22.1倍と最も低い部類で、ROE 13.1%と収益性も無難なので、相対的にバリュー負担が軽い銘柄です。
  • 三菱電機(6503)は電力機器、FA(工場自動化)を併せ持つ総合電機会社です。PBR 2.74倍と電線株に比べれば落ち着いており、経常利益+20.3%と安定しています。

第4段階 冷却・空調 - 熱を冷ます

GPUは膨大な熱を出します。その熱を冷ませなければ、データセンターは動きません。

ダイキン工業(6367)は世界1位の空調(エアコン)企業で、データセンター冷却需要の恩恵を受けます。興味深いことに、この8銘柄で最も落ち着いています。ベータ0.87と唯一1未満で、1年の株価も+45.6%と電線株に比べれば緩やかに上がりました。AIテーマでありながら変動性が低い、性格の異なる銘柄です。

電線株の急騰をどう見るか

この記事で最も目を引くのは電線3銘柄の上昇です。古河電工は約7倍、住友電工とフジクラは約4倍上がり、いずれも1年での出来事です。

ここで、メモリ・HBM関連株を見るときと同じ点検が必要です。経常利益が実際に大きく伸びた点は明らかです。AIデータセンターの電力需要は短期の流行ではなく構造的な流れです。しかし同時に、株価がその業績より速く上がり、バリュエーションが高くなったのも事実です。フジクラのPBR 14倍、古河電工のPER 44倍は「この先も高成長が続く」という前提が織り込まれた価格です。その前提が少し揺れただけでも、調整の幅は大きくなり得ます。

実際にこれらの銘柄は、年初来高値から見ればフジクラ−40%、古河電工−21%と、すでに大きく揺れた局面があります。構造的な需要と高いバリュエーションが同居する、変動の大きい局面だということです。

銘柄ごとの一言まとめ

  • 三菱重工業(7011)ガスタービン発電でデータセンター電力需要の恩恵。PER 31倍と期待が先行し、足元は調整中です。
  • フジクラ(5803)データセンター光ケーブルの代表株。ROE 32.5%と業績は最高ですが、PBR 14倍と最も高いです。
  • 住友電工(5802)総合電線株。1年+337%と大きく上がりましたが、PBR 3.70倍と負担は軽めです。
  • 古河電工(5801)1年で約7倍と上昇率は最高。そのぶんPER 44倍とバリュー負担も最高です。
  • 日立(6501)送配電グリッドの大型株。電力インフラの幅広い恩恵に、変動性は相対的に低いです。
  • 富士電機(6504)パワー半導体の強豪。PER 22倍とこの表で最も割安な部類です。
  • 三菱電機(6503)電力機器、FAの総合。PBR 2.74倍と落ち着いて安定しています。
  • ダイキン工業(6367)データセンター冷却の恩恵。ベータ0.87と唯一ディフェンシブな性格です。

おわりに

AIデータセンター関連株は「半導体の次」のテーマとして浮上し、その中心には電力があります。発電から電線、電力機器、冷却まで、バリューチェーンの各段階に日本の代表企業が並んでいる点は、日本株では珍しい強みです。ただし同じAI電力テーマでも、古河電工のように期待が大きく先行した銘柄と、ダイキンのように落ち着いた銘柄では性格が大きく異なります。構造的な需要は本物ですが、いまの株価がその需要をどこまで先取りしたかを銘柄ごとに分けて見ることが、このテーマを見るうえで最も大切な点です。


※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。指標は2026年6月5日終値ベースの参考値であり、正確性・最新性を保証するものではありません。株価は相場によって大きく変わり得るので、実際の判断の前には各証券会社や公式IRで最新値をご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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